異例づくめの全人代・・・経済成長率の目標示さない理由

異例づくめの全人代・・・経済成長率の目標示さない理由

中国の最重要会議の一つ、『全国人民代表大会』が22日、開幕しました。本来は、3月5日からでしたが、今年は新型コロナウイルスにより、異例の2カ月半遅れでの開催となります。取材陣も各地の代表者も全員がPCR検査をしなければいけません。マスクも全員の着用が義務付けられましたが、最高指導部は例外です。
李克強首相の今年の演説は、新型コロナウイルスへの言及から始まりました。
李首相:「今回の新型コロナウイルス感染症の発生は、建国以来、見舞われた感染症のなかで、最も流行スピードが早く、感染範囲も広く、抑制が最も難しい公衆衛生の事件。中華民族の人々は風雨同舟し、互いに見守り助け合い、新型コロナウイルス感染症との戦いの巍然(ぎぜん)たる長城を築いた」

新型コロナウイルスの影響が色濃く反映された全人代ですが、国防費は前年比6.6%増え、約19兆2000億円になったことが報告され、香港に対する新たな法整備も発表されました。
李首相:「国家安全を守るための法制度・執行メカニズムを確立し、憲法で定められた責任を特別行政区に履行させなければならない」
ただ、これは国家安全法の導入が念頭にあるとされ、デモの取り締まり強化などにつながることから、すでに抗議活動が始まっています。

今回の全人代では、中国が直面している大きな問題も浮き彫りになりました。毎年、打ち出している年間の経済成長率の目標値を発表しませんでした。現在、中国では工業製品などに対する各国からの受注が感染拡大により激減しています。経済成長率が1.2%にとどまるとの試算もあります。
李首相:「経済成長率について具体的な年間目標を提示していない。我が国の発展が直面している試練は、これまでになく厳しい。新型コロナウイルスの打撃を受け、世界経済の衰退が深刻化し、サプライチェーンにダメージが生まれた」

影響は日本にも及んでいて、スマートフォンなどの電子部品を作っている『三和クリエーション』では、中国から一部部品を調達していますが、その製品が入ってこず、生産量が減っているといいます。今月の落ち込みは30%以上になる見込みです。この工場は、台風19号の被害から1月末に完全復旧したばかりでした。三和クリエーションの手塚健一郎社長は「不安がないと言ったら嘘になる。不安だらけです。従業員一人一人の生活があるので、そこを支えるのが責務。やれることをやっていく」と話します。

◆テレビ朝日の中国総局の千々岩総局長が報告。

今回、経済成長率の目標が示されなかったのは、あまりに低すぎて公表できなかったと思います。
中国というのは、年初に成長率目標を出したら、必ず達成しないといけません。『ちょっと足りませんでした』が許されない国です。今回は、あまりに不確定要素が多い。コロナだけでなく、米中の摩擦もある。世界経済が冷え込めば、その反動を受ける。必ずクリアしないといけない数字を、掲げるわけにはいかないという事情があったと思います。

今回の演説は、例年に比べて非常に短く、これまでに比べて温厚で、飾り立てる部分が少なかった。「コロナを抑え込んだわけではない」「政府に不十分な点があった」と認めるような箇所もありました。国民の不満、その不満が政府に向かってくると政権基盤を揺るがしかねないという危機感の表れでもあります。比較的穏当なトーンで続いてきたなかで、最後の最後になって、香港のフレーズが出てきて、グッと爪を見せたわけです。中国政府が、見据える先にあるのは台湾です。このところ台湾に注目が集まる場面が増えていますが、中国は苦々しく見ています。きょうの演説では、台湾の下りが出てきます。これまでは「平和統一を進める」という言い方を続けてきたのが、今年は“平和”という2文字が消えました。この台湾に対する2文字が消えたこと、そして、香港に対しての締め付けを強める。こういうところを見ますと、一段フェーズが上がったような感じがします。